TRUMP
日曜午後の回し蹴り
あの事件に関しては、海斗さんは、悪気があったわけではないと、響さんに、あたしが話し、なんとかおさまった。

別に海斗さんを助けるつもりはなかったが、あたしも言い過ぎたところはあったので、目をつぶった。

でも、あの日以来、海斗さんは、あたしがバイトに行くと、休憩室から出ていくようになった。

響さんと海斗さんが何の話しをしたかは聞けなかったけど、とりあえず海斗さんは、いつも通りに見えた。

海斗さんとは、さらにしやべらなくなり、響さんとも、あたしが変に意識してるからなのか、前みたいに話すのが難しく感じていた。

今日は、日曜で午前中から家の用事があったため、バイトはお休みをもらっていた。

でも思ったより、家の用事が早く片付いてしまい、お昼過ぎには暇になってしまった。

そこで思いついたのが、普段、従業員としてラピスラズリで働いているけど、お客さんとして行ったことがなかったから、どんな雰囲気なのか、体験してこようと思ったのだ。

で、気合い入れて、ちょこっとお化粧と、淡いブルーのグラデーションのワンピースと白のサンダルを履き、いざラピスラズリへ向かった。

家からそんなに離れていない場所で、シルバーの車の運転席に見覚えのある人を見かけた。


智也、さん?


まさか、ねぇ。


この時間は、ラピスラズリで仕事中だよね。


あたしは、物陰に少し隠れて、智也さんに似ている人物を、目を凝らして確認した。


やっぱり……。


智也さん。


休憩中なのかな。


あたしは、智也さんだと確認すると、智也さんに向かって歩いて行った。

智也さんは、あたしに気づかず、ある一点を見つめていた。

その方向を見ると、お値段がいいと評判のマンションだった。


なんで?


声を掛けようと近づくと、智也さんが、車から降りてきた。

「智也さん、何してるんですか?」

あたしは、智也さんに声をかけた。

突然声を掛けられたためか、智也さんは、驚いた表情を見せた。

「あ、藍……」

「今日智也さんもお仕事お休みなんですか?」

「あ、いや、藍何してんだ」

逆に質問された。




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