君の詩が色褪せても
「あの時の私は、自分が嫌いだったから」
愛里子の残した言葉を思い出す日和。
憧れの素直で明るい愛里子みたいな自分になれるまで、日和に会いたくなかったこと。
この海の見える公園に恋する気持ちを置き去りにしたこと。
日和のことが好きだったこと。
弥生のなくした記憶と恋心を、愛里子から聞いた真実を、日和は噛み締めていた。
「今でも…嫌いなの?自分のこと」
日和は弥生の瞳をしっかり見つめて尋ねた。
「嫌いだったら、こんな格好はしてないよ」
弥生は、その日初めて微笑んだ。
思わず胸が高鳴る日和。
「あの時、逃げ出したことは後悔してない。結果、今の私になれたから」
「…弥生さん…」
「記憶は無いのに、私は知ってるの」
再び海を眺める弥生。
「ここで、初めて日和くんと出会ったこと。有名人な貴方を本気で好きになったこと。あなたにありがとうと伝える為に、頑張ってプロになったこと」
日和も海を眺める。
「何で、知ってるんですか?」
「愛里子っていう可愛い妖精が教えてくれたの…」
「…愛里子が?」