眠る心
紫季が医者になったのは
父親の病院を次ぐためだった。
  
桐島診療所の委員長である
父親と、その母(祖母)に
幼少の頃から医者になる為に
英才教育を受けさせられ
  
父と祖母の敷いたレールの上
を逆らわずに黙って
歩まされて来ただけで
自分の意志で、医者になった
訳では無い。

しかし、父が望んでいたのは
外科医。

「こんな私ですが
 精神・神経内科医に
 なることだけは
 譲れませんでしたけど
 
 つまらない話をして
 しまったね」
 
話が反れてしまったことを
紫季は深く反省する。
  
診察は終わるが、なかなか
席を立つ事ができない私。
  
一呼吸置いてから席を立つが
どうしても紫季先生に
伝えたい言葉があり
その場に立ったまま
動けないでいる。
   
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