エングラム
これが私の名前。花の名。
「……そういえば、シイの名前知らない」
不思議。
シイだって私の名前しか知らないだろう。
ケイの名前だって、今日初めて知った。
──鈴木惠太。
ケイタ、だからケイなのだろう。
シイは…なんだろう。
女の子らしいけど、シイカとか?
ユウは、ユウキとかかな。
本当に名前がユウかもしれないけど。
そんなことを考えていたら、お風呂からあがったのだろう、シイが戻ってきた。
「おかえりなさい」
「おー、ただいま」
黒い髪をタオルでガシガシしながら、シイは答えた。
長い前髪はかきあげられていて、いつもと違う雰囲気が格好良い。
いつもは眼鏡越しだけど、真っ直ぐな目が。
軽く濡れた太い首筋とか。
──ってうわぁ何見てるんだろう自分!
幸い彼の心を読むチカラはオフだったらしい。
シイはタオルを肩に掛けて私の隣に腰を下ろした。
「そういえばシイの名前ってなんですか?」
いつもと違う雰囲気に見とれないように見ながら聞いた。
「あぁ、そういえばそうだな」
シイは続ける。