エングラム




それを口に含んだ瞬間──私は吐き出しそうになった。

何て言うか──溶かしたプラスチックがかけられた木綿豆腐みたいな味だった。

とにかくまずかった。失礼だけど。

歪められた私の顔に気付いたユウとシイが私に言う。

ケイは超味覚音痴なんだよ、と苦虫を噛み潰した表情で。

そうなんですよ、ユウが頷いて同意を示した。

早く言ってください!
その言葉をプラスチックがかけられた木綿豆腐と共に飲み込む。

ひどいなー、もう。どぅシランちゃん?
早起きして作ったんだよと続けたケイに苦笑を返した。


おかずを全力で食べ切ろうとする私の喉にそれが詰まった。

ニヤニヤと笑うユウが、私に水筒のコップを渡してくれた。

液体の中身を確認することもせずそれを飲み込んで──ごくんと飲み込んだ私は気付いた。

お茶にしては味が甘い、水にしては酸っぱい。ジュースというには…。

みるみる内に私の顔が朱でさす。

ケイが笑いながら言った。
…ユウお酒飲ませたでしょお。

あー、すみませんいつも水筒にはこれで。
と答えたユウは明らかに確信犯だ。



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