エングラム
「いよいよ体育大会だ優勝すっぞオラァア!!」
いる。どこのクラスにもいる。
勉強はいまいちだが行事には全力を注ぐ坊主の団長。
開会式が終わっただけなのに滝のような汗。
「オラアァアッ!」
「やるぞぉオイ!」
今返事をしたクラスメイトたちはどこにいる危ない集団だろう。
10月半ばに行われる体育大会。
クラスのカラーである赤い鉢巻きをつけた私も、円陣を組んでいた。
隣は何故かあの男子学級委員長。
逆隣は、もう名前を覚えた女子のクラスメイト。
「赤ぐみぃいいっ、ゆーうーしょおおおっ!!」
「おぉおっ!」
大きな声の中にやる気のない自分の、おぉ、がやけに低くハッキリ聞こえた。
秋の水色に、いくつもの激しい声が溶けた。
出場する競技がまだ先なので、クラスごとに振り分けられたテントの下でお茶を飲んでいた。
「シランさんっ、頑張ろうね!」
いきなり女子に肩を叩かれてお茶が喉に詰まった。
げふげふと咳き込む私の肩を、あはは、と笑いながら彼女が叩く。
うん頑張ろうねと咳き込みながら必死で返した。
「あははっ、頑張ろっ!」
そう言って彼女は自分のグループに戻って行った。