エングラム



この学校は、どのクラスも学年ごと課題曲と自由曲を歌う。
そして全校合唱と、三曲は歌うことになっている。

一年生の課題曲は、フェニックス。
二年生の課題曲は、時の旅人。
三年生は、消えた八月。

どれもポピュラーでよく歌われる曲だな、とプログラムを見ながら思う。

三年生の隣のクラスは、自由曲で黒人霊歌を歌うようだ。


蒼鷺勝てるかなぁ、と一年生が歌うステージを目に写しながら考えた。

特に綺麗な歌声でなく、ひどいことを言うとどれもパッとしない合唱だ。

だが彼らも必死で練習したんだろうと思った途端、それは世界でただ一つの歌に変わる。


気が付いたら自分らが歌う番になっていて、歌い終えていた。

一番鮮明なのは、隣のクラスが歌った黒人霊歌。
迫力ある歌声は圧倒的だった。

聴いていてクラスメイトは蒼鷺が墜落したねと落ち込んでいた。自分も然り。

あまり聴かない黒人霊歌ばかりに気をとられていたが──更に次のクラスの曲も驚いた。


stand by me。



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