洒落にならない怖い話
普通の人は目の下に頬骨があって、眼窩はへこんでる。


だけどそのお婆さんは、不自然に凹凸のなくのっぺりした顔。


皺だらけなのに目は埋もれていない。


魚の、キンメダイやサケガシラみたいにどろんとした目。


あのお婆さんが生まれて初めて恐ろしかった気がする。


なにをどういいわけしたのか、もごもご言っているうちに、おばあさんは随分親切になって、家の中に私を連れ込みました。


それから、色んな話を聞いた気がするけど、私はもう帰りたくてしょうがなかった。


「もううちにかえらないと」というと、お婆さんは随分渋りました。


「ここにずっとおればええがね」


「ここにずっとおればええがねぇ」


と私の左肩をつかんで揺すりましたが、もうここから抜け出したいの一念で


「うちにかえらな」


「うちにかえらな」と言っていました。


とうとう諦めたお婆さんは、奥からジュースを取り出してきました。


スイカのジュースみたいな色で、なんだかどろりとしています。


「外は日が当たってるから、出れんから」と言われ、私はこれさえ飲み干せば帰れると思い、頑張って飲みました。


甘さベースでしたが、妙に生臭くて、生の小麦粉みたいに苦かったです。
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