蝉女
猫みたいな名前だが、ミーンミーンのミー子だ。セミの鳴き声がミーンミーンだけではないのはもちろん知っているが、ツクツク子やジー子よりは良いだろう。
「俺は佐倉良隆。良隆でいいよ」
「良隆さん」
ふふふ、となにが嬉しいのかミー子は微笑む。
本名を教えるのはまずかったかな、と言ってしまってから思ったが、連れ立って昼食をとりに来ているのだから今更だろう。
お世辞にも綺麗とは言えない小さなラーメン屋は、独り身であろう中年男性ばかり座っていた。そんななかに若い女を連れた俺が入って行くのだから、視線が向けられるのは無理もない。悪い気はしなかった。
テーブル席に通され、チャーシュー麺をふたつ注文する。
ミー子はなにが物珍しいのかきょろきょろと落ち着きなく目を動かしていた。
「ミー子はここら辺に住んでるの?」
「はい。この土地で産まれ、この土地で育ちました」
俺がグラスの水を飲み干すのを見て、ミー子も一口分グラスを傾ける。
「家はどこにあるの?」
「家はありません」
「えっ」
「昨夜出てきたばかりです。長い間籠っていたのですが、大人になるために飛び出してきました」
「俺は佐倉良隆。良隆でいいよ」
「良隆さん」
ふふふ、となにが嬉しいのかミー子は微笑む。
本名を教えるのはまずかったかな、と言ってしまってから思ったが、連れ立って昼食をとりに来ているのだから今更だろう。
お世辞にも綺麗とは言えない小さなラーメン屋は、独り身であろう中年男性ばかり座っていた。そんななかに若い女を連れた俺が入って行くのだから、視線が向けられるのは無理もない。悪い気はしなかった。
テーブル席に通され、チャーシュー麺をふたつ注文する。
ミー子はなにが物珍しいのかきょろきょろと落ち着きなく目を動かしていた。
「ミー子はここら辺に住んでるの?」
「はい。この土地で産まれ、この土地で育ちました」
俺がグラスの水を飲み干すのを見て、ミー子も一口分グラスを傾ける。
「家はどこにあるの?」
「家はありません」
「えっ」
「昨夜出てきたばかりです。長い間籠っていたのですが、大人になるために飛び出してきました」