蝉女
 ミー子はきょとんと目を丸めてから、納得したように頷いた。
「セミは雄しか鳴かないのです」
 にこやかに答えるミー子に、降参の意を込めて両手を空にかざした。箸の持ち方は知らないくせに、博識じゃないか。
 緑色の看板が主張するコンビニはまさに天国だった。抜群に効いている冷房、立ち読みをする中学生、カップラーメンを並べながら無関心な挨拶をする店員。
 体を伝う汗が冷えていくのを感じる。
 本当ならば1時間はここで粘りたいところだが、あいにく今日は個人行動ではない。中学生の隣で雑誌を手に取ることは諦めて、俺はアイスクリームをふたつ購入して足早に天国をあとにした。
 先程の公園に戻り、木陰のベンチに並んで腰かける。
 コンビニほどではないが、空からの日光が遮られると幾分か涼しくなった。
「すみません、色々食べさせていただいて」
 カップ入りのソフトクリームを受け取りながらミー子が申し訳なさそうに肩を竦める。
「いいよ別に、これくらい」
 たかだかラーメンとコンビニアイスだ。普通の女の子なら嫌な顔をされても仕方ないデートプランである。
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