不思議の国のお伽噺。



私が、つけた?


「…何を言ってるの?

私ははじめてここに来たのよ?

私が、つけたわけ…」


「…アリスが、全部忘れたことは分かってるよ。


でもね。この店の名前をつけてくれたこと
それは、僕にとってとてもいい思い出なんだ。

だから、これは、覚えておいて。

この店の名前をつけたのは、アリス。君だよ。」



てんちょーさんは悲しそうに、笑った。

私の顔色は深まっていくばかり。


「…てんちょー。
僕たち早く出なきゃいけないんだ。

洋服、早く渡してくれる?」



チェシャ猫は、これ以上私に話を聞かせない、とでも言うように、てんちょーとの話を進めた。



すると、てんちょーは表情を変え、目を輝かせた。



「そうだったねっ!


アリスがいつ帰ってきてもいいように、たっくさん作っておいたからね!」



指をならし、両手を広げると、店の奥からたくさんの洋服が出てきた。
まるで魔法のように。



「っわぁ…!

(全部ゴス服っ…)」



でも私が気になったのは。





〝いつ帰ってきてもいいように〟




というてんちょーさんの言葉…。











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