不思議の国のお伽噺。



「さぁアリス。

これを着てきて?」



「えっ…?」



それは特別に袋に包装された服。

私は洋服を両手で受け取り、辺りを見回した。



「フィッティングルームはあそこだよ、アリス」



「ありがと、てんちょーさん」



私は走り、部屋にはいった。



着替えている途中も、私のなかに疑問は絶えない。



私の中の記憶は、全く無い。



そもそも、最初に言った藤荻愛莉は、本当に私の名前なのかな?



だって、ここでの私の名前はアリスだもの。



〝彼〟は、本当に誰なんだろう。



もどかしさが、私を苛立たせる。



なんにも分からない。



皆の悲しそうな顔の意味。



繋がらない記憶と現在(いま)。



なんにも、分からない。



それに…


殺されたのに



何で私は生きてるのかな?



全然…分からないっ!




頭をかきむしり、忘れてしまおうともがく。




パニックを起こしかけたとき、洋服に異変を発見した。



「……チ、チェシャ猫?



靴下が一足ないよーっ!」



「何言ってるんだアリス。


それがおしゃれなんだよ?」





…そんなの初めて聞いたよっ!!!











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