不思議の国のお伽噺。



「アリスが思い出しているのは、アリスの


容姿
両親
友達


でしょう?


アリスは、


そのときそのときの感情を今理解しているの?」




両親に対する感情も、覚えていないわけな…












…ア、レ?







「わからない?わからないよね?


だってアリスはまだ思い出してないんだもの




アリスは今、第三者から見て分かるアリスを思いだしている


アリス自信の記憶など思い出してはいない



わかるよね?この意味」





そう、そうだ。

ところどころ私自身の記憶を思い出していても、はっきりと記憶することはできてはいない。



うっすらと、自分の中の感情を持っているだけ。

私自身の記憶はない。





ああ、今自覚した。





「ワたしハ、かラっぽ…」




手が震えて、涙が溢れ出す。





「フフフ、今更気付いたの?」




虚無に包まれる体。誰かに支えられていないと、今すぐにも消えてしまう。





「アリス、今君は誰かに頼りたいと思っているでしょう?



僕に頼って良いよ。


僕とおいでよ。



そうすれば。



君は幸せな記憶[サイゴ]を迎えられる」





私を抱きしめる手はどんどんと強くなる。
私はゆっくりと上を向きながら、言葉を紡ぐ






「あなたは、」






真っ白な髪。色の白い肌。朝日は、彼の髪の毛をキラキラと照らしている。


そして、




「ダレ…――――――?」





私を射抜く、赤い瞳。







「フフフ、僕は。」





その狂気の瞳は三日月に歪む。私は、一瞬震えた。






「君の味方の白ウサギ…さ?」




後ろに束ねてある、白ウサギの髪が揺れた。







.
< 150 / 159 >

この作品をシェア

pagetop