不思議の国のお伽噺。

gp.5 トモダチトノキオク。




チェシャ猫におぶられ、私はまた空を飛んでいた。



チェシャ猫の背中はみるみる涙で濡れていく。



泣いていると、私は、いつのまにか眠っていた。












こんどは、真っ暗な空間にいた。
誰もいない。
あたし以外。




『アリスは、覚えてる?』



…何を?



『私たちが、初めて会った日のこと』



……。



『…、これから、あなたの友達の記憶、全部流すから…


ゆっくり、思い出しなさい』











声が消えると、そこには、泣いている私がいた。

幼い私。
…声をかけてもいいのかな。



『うぅっ…うぇーんっ!!


どうせ、皆あたしのことっ…怖がってっヒック…取り入ってっ…こよっと…ヒッ…してるんだぁぁぁぁぁぁあ!!!』



泣いている私の意図が分からなかった。
私の何が怖がられていたと言うのだろう。


何、いったい?





『アリス様…』



『様なんてつけないでっ!!

もうこんなとこにいたくない!!』



幼いチェシャ猫。
髪は短く、鈴とリボンはつけていない。



『あ、アリスっ…さん』



『アリスでいぃぃい!!』



『アアア、アリスッ!

泣かないでよ…』



『ふぅ…うっ』



『あれ?

何泣いてるの?
アリス』











.
< 72 / 159 >

この作品をシェア

pagetop