ク ロ
飛び込んではこない。
どうぞと言われるのを待っているかのように、
おとなしく座ったままでいる。

私は手を伸ばして、ヤツを掴みあげた。

そうしたいなら、もう一晩泊めてやってもいい。
でも、うちのルールには従ってもらう。


キッチンへ直行。


湯沸かし器のぬるま湯で、足をゴシゴシ洗う。
昨日は抵抗する元気がなかったが、今日は違うようだ。

掴まれていない足で、
湯沸かし器の蛇口を懸命に押しやっている。
容赦はしない。


ヤツは、ウニャァァン…と、一声だけ抗議の声をあげた。

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