千夜を越えて
「トシっ!女子に何をしている。」
そこに現れたのは、
「近藤さん。でも、こいつぁ「でもも何もない。下ろしてあげなさい。」」
た、助かった…
あたしは天井から下ろされ、腕と体の縄を解かれた。
「すまなかったね。女子だとは思わず、酷いことを…」
そう言って、羽織りをあたしに掛けてくれた。
「いいえ。大丈夫です。あたしが、こんな格好だったから悪いんです。
それに、迷子っていうのだって、信じてもらえないのも無理ないですから。」
近藤さんに深く頭を下げる。
「突然どうしたのかね。」
「あたし、道に迷ったんです。信じて下さい。」
「頭を上げたまえ。なぁに、気にすることはない。何処からきたのかい。」
優しく尋ねてくれるのは有り難い。
だけど、それには答えずらいな…。
「黙ってねぇで、早く言え。」
土方の奴。ホント、憎まれ口ばっかたたいて。
「えっと…その…」
「はっきりしろ。」
「トシ。言いづらいかな?帰りたくないとかかい?」