千夜を越えて
「あのぉ…あたし、そろそろ夕飯の支度が…行って良い?」
「もうそんな時間ですか。引き止めてしまってすみません。」
「悪かったな、咲夜。
ってことで、新八、平助、戻んぞ。」
原田さんが、永倉さんと平助君の肩を抱きながら部屋を出て行った。
あたしも、その後に続くように部屋を出ようとした時、沖田さんに呼び止められた。
「咲夜さん。貴女は本当に咲夜さんですよね。」
「何言ってんの?あたしは咲夜だって、さっきも言ったでしょ?」
呆れた口調で言うと、沖田さんは薄く微笑んだ。
「本当に…僕は何を言ってるのでしょうね。すみません。」
どうぞ、と、沖田さんは手を廊下の方へと向ける。
あたしは首を傾げ、そのまま部屋を後にした。
そう、この頃はまだ何も知らなかったのだから…