ゆゆし

薄桃色の部屋

「先生先生、なんでこれだと駄目なんですか?」

場所は昼下がりの病院。
少女はクラスの代表で担任の古典の教師の見舞いに来ていた。
お見舞い用の花って、結局、どんなものを選んで良いのか分からなくって。
少女はそう言いながら、持って来た黄色いガーベラの花束を花瓶に無造作に刺した。薄いピンクで統一された部屋の一隅がにわかに華やぐ。
彼女なりに考えたのだろうと、微笑ましい気持ちになって担任の教師は言った。

「ああ、この言葉には色々な意味があってね、今の問いでは『不吉だ』ということだけを書いても駄目なんだよ。『不吉なほど美しい』っていう意味を書かないと」

少女は首を傾げた。
長くてまっすぐな髪がサラサラと音をたてる。
その表情はまだあどけない。

「それって、全然違う意味のような気がするんですけど。美しいのは良いことでしょ?不吉なのは悪いことじゃない。昔の日本人って何考えてたか分かんないです。好きなのに悲しいとか、可愛いのに可哀相だとか」

担任は少し考えるような顔をして、言った。
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