ゆゆし
「でも、あまりに綺麗なものって何処かはかなげでしょう?気をつけて見ていないと、勝手に壊れてしまいそうで」

「・・・納得いかない」

担任の教師は困ったような顔をした。肩を竦めるが、目尻にはシワがよっている。
この人はいつも笑っている、と少女は思った。

「そうだね、まだ難しいかもしれない。でも、」


きっといつか分かるよ。


少し開いた窓から風が入ってきて、病室のピンクのカーテンを揺らした。
少女は、病院独特の薬品の臭いの隙間から、土の臭い、春の新しい臭いが吹きこんできたのを感じた。
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