ゆゆし
都はそう言って、立ち上がった。夏井に代わりに本を返しておいてくれるように頼んで、部屋を出る。
必要以上に明るい病室から出ると、廊下は湿っぽく暗いように感じられた。




その後都は図書館に向かった。市内には市立図書館が二つあるのだが、小さい方の一つがこの病院の中に入っているのだ。お見舞いに来ている人、そして入院患者の利用者も多いがパジャマなどでは来ないので区別はつかない。
都の家からはこの図書館の方が近く、小さい頃からよく利用していた。

探していた好きな作家の新刊は入っていなかったが、適当に何冊かの本を選び、閲覧室の長机の席の一つに座る。
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