幼なじみは年の差7歳【完全版】
「…お袋ってデリカシーのカケラも無いよな…」
それだけを言い、私の手を掴んで立たせ、それから同じように麻実ちゃんの手を掴んで立たせた。
「とりあえず俺の部屋行こ。お袋が居たら話せないし」
相変わらずめんどくさそうに言う良明くんに、お母さんは気にすることなく笑う。
「変なことしちゃダメよー?
あ、ケーキと紅茶持って行くね」
私たちに手を振るお母さんに軽く頭を下げて歩き出し、良明くんに続いて階段を上る。
そして部屋の前で、良明くんは振り返った。
「ちょっと待ってて。30秒だけ」
言い切る前に、ドアを開き体を滑り込ませる。
直後にガタガタと、何かをしまい込む音がした。
「…良明のお母さん、なんか凄いよね。
“あの”良明がずっと嫌そうな顔してるなんてそうそう無いよ」
壁に寄りかかった麻実ちゃんが静かに言う。
確かに、良明くんがずっとめんどくさそうな、嫌そうな顔してることなんて今まで無かった。
「良明の意外な一面、だね」
麻実ちゃんがそう言った時、ドアが勢いよく開く。
「どうぞお入りくださいませ」
呼吸を整えながら良明くんは笑った。