依存~愛しいキミの手~
圭介にスウェットを借り、お風呂に案内された。


本当に広い家…。


「タオルここ置いておくな。洗顔お袋の勝手に使っていいから…お前化粧やばくなってる(笑)」


圭介が指の裏で私の頬に触れる。


冷たい指…。


思わず顔を伏せた。


圭介は私の頭をなでて部屋に戻って行った。


洗面台の鏡に映し出された私の顔は化粧がボロボロに崩れ、圭介の言う通りやばかった。


「ははっ、本当にやばい(笑)」


空笑いをしてお風呂に入った。


『年少に入ってから』


圭介の声が頭に響く。


少年院…。


そこに入ることになったのは、春子さんのことがあったから。


春子さんがいなくなったから、圭介の家族も何か変わった…?


頭にシャワーをぶっかけた。


違う、ただ少年院に入るような息子に呆れたとか、そんな理由だよ。


春子さんは関係ない。


…そう必死に自分に思い込ませるけれど、あの初めて聞いた圭介の暗く静かな声に、春子さんのことを今も見続けているんだと痛感した。


キス…だったよね…?


あれはどういう意味だったの?


圭介のこと好きになったらダメなのかな…。


頭を横に振り、ごちゃごちゃ浮かぶ考えを振り払った。


気にしない…。気にしちゃダメ。圭介も普通なんだから、私も普通にしないと。
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