依存~愛しいキミの手~
その喧嘩をした日から、夏休みの間ずっと美香の家に家出をしていた。


携帯に連絡が来たりしていたから、きっと心配はしていたんだろう。


だけど、素直になれない自分。


あれだけ啖呵切ったのにノコノコと帰ることが許せないプライド。


美香の家で過ごす生活が楽しすぎて、帰りたくない気持ち。


色んな思いが混じりあって、とりあえず面倒くさいことは考えたくないので毎日仕事に遊びにはしゃぎまくっていた。


「着いたぞ」


圭介が私の肩を揺らし起こす。


お酒の抜け切らない体を起こし、電車を降りると潮の匂いがした。


「ヨダレ(笑)」


そう笑って私の口元に黒くなった手を当てる圭介。


圭介は夏になったら本当にギャル男に戻った。


白髪に黒い細いメッシュを入れ、日サロや海で肌を小麦色にした。


最初は違和感があって爆笑したけど、見慣れるとかっこいい。


ギャル男圭介になっても優しい笑顔と、心地よい手は変わらなかった。


「オセロみたい(笑)」


圭介と繋いだ手を見て私が笑った。


「あすかって本当に焼けないね!」


優と腕を絡ませながら歩く美香が振り返って言う。
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