依存~愛しいキミの手~
「そういえば、知美は志望校どこなの?」


階段を下りながら、知美の顔を見て聞く。


知美は眉を下げ、俯いた。


「先生はH高勧めてくるんだけど…」


「H高!?すげー!!私なんて逆立ちしても入れないよ!」


H高は県内トップクラスの進学校だ。


毎晩働いてるのに、そんな頭いいなんてすごい…。


「昔はね、いい高校行っていい大学行っていい企業入社して、お金持ちと結婚できればいい…なんて思ったことあったんだけど…。今は水商売がすごく楽しくて、六本木や銀座で働いて自分を試してみたいと思ってるの」


銀座…。


知美はそんな先のことまで考えて、働いていたんだ…。


「だからね、高校に行く理由が分からないんだ…」


知美が手すりにつかまり、足を止めた。


私も2段下がった所で足を止める。


「う~ん…。私はあえて理由つけるなら、出会いを求めに行く、かな」


「出会い?」


私の顔を覗き込むように、知美が隣に並んだ。


「ほら、知美と仲良くなれたのも学校でしょ?学校でじゃなきゃできない出会いってあると思うんだ。圭介にも、高校行けるなら行った方がいいって言われた。早く社会に出たって得なんかないし、友達ができる機会も減るって」


私はそう言いながら足を踏み出した。


「ちょっと待ってて!!」


慌てて階段を駆け上って行く知美。


?


どうしたんだろ?
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