依存~愛しいキミの手~
まだ暗い夜明け前。


白い息を吐きガタガタ震えながら、聖蹟桜ヶ丘の芝生の丘に座る。


「やっべー、まじ寒みぃー」


そう言いながら、ダウンジャケットのフードをかぶる優。


ミルクティーの缶を包む私の両手も震えていた。


「歯がガチガチ鳴る(笑)」


圭介が空いた缶の中にタバコの灰を落としながら笑う。


「寒いけど、夜景綺麗だね」


知美の言う通り、丘の上から見える夜景はすごく綺麗だった。


「ここスポットだもんね」


優の後ろにくっつき、風を避ける美香が言った。


何かの映画の舞台になったから、結構人が集まるらしい。


確かに、元旦ではないのに私たちの他にも人が数人いた。


寒さに耐えながらしばらく待つと、空の下側がオレンジ色に染まり始めた。


ゆっくりと遠くのビルの上から顔を出す太陽。


空の上は暗いのに、下はオレンジ色。すごく神秘的な光景だった。


吸い込まれるように陽が昇るのに見入る。


すごく綺麗で、自然と顔がほころんでいった。


初めて朝陽が昇るのを見た。


夕日が沈む時と同じ色。


太陽が私たちを照らしながら、少しずつ陰を作って行く。


圭介と手をつないだ陰に、なぜかすごく感動した。


あの時みんなで見た初日の出は、10年たった今でも目に焼き付いている。


もう6人では2度と見ることのできない、静かな朝の訪れ…。
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