依存~愛しいキミの手~
そして合格発表日。


志望校の前を歩いていたら、塾の特に仲良くもない子が歩いてきた。


目が合うと、


「落ちちゃったぁあ」


と、私に抱きついて泣き出し困った…。


「一般もあるし大丈夫だよ」


と、背中をなでて慰めることしかできなかった。


が、はっきり言って今から合格発表見に行くのに、不安にさせないでくれと思った。


昇降口を入り辺りを見回す。


テレビドラマなんかでは、掲示板にズラーッと合格番号が書いてあるが、どこにもそんな物がない。


よく分からないまま、目の前のエントランスに設置された受付に行き、受験票を見せA4サイズの封筒を受け取った。


何入ってるんだろ?


受付の横で封筒を開け中身を確認すると、書類と1枚の小さな紙。


『合格』


とだけ書いてあった。


あ、受かったのか…。


想像していた合格発表とあまりにもかけ離れていて、実感がわかなかったのか、それだけしか思わなかった。


安心感とか、嬉しさも特に感じない、何とも微妙な合格発表。


とりあえず、すぐ隣のラウンジで手続きを済ませ、ベンチに座って親に電話をかける。


「良かった…良かった…」


そう電話越しの母親は安堵の声をもらし、泣いていた。


学校に戻って職員室に報告に行くと、先生も万歳三唱して大喜びしていた。


教室に戻っても、みんなが喜んでくれた。


そんな周りの祝福ムードについて行けず、何か取り残された気分になった。


やっと髪染めれるわ…。


それだけ。


何て自分は感動がないヤツなんだろうと思った。
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