依存~愛しいキミの手~
家に入ると、お香の匂いがした。


黒いソファーに黒いカーテン、ロフトがある1Kの家。


「これ龍ちゃん?」


壁に飾ってある家族の写真を指差し聞いた。


「そ。かわいいだろ(笑)」


うん、確かにかわいい。
今の龍ちゃんの面影がある。


龍ちゃんは、21歳の大学生の割に童顔でかわいい顔をしていた。


「はい、ビール」


写真を眺める私にビールを渡してくれた。


「ありがと!」


ビールを飲みながら龍ちゃんと色んな話しをした。


龍ちゃんの学校のこと、地元のこと、バイトのこと。


龍ちゃんは、聞けばにこにこしながら何でも答えてくれて、それがすごく嬉しかった、


知れば知るほど龍ちゃんが好きになる。


そう思い込んでいた。


龍ちゃんは私のことを、何も聞いてこないことに気づかないフリをして…。


「あすかかわいいな」


そう言って髪をなでられる龍ちゃん。


頭をなでる優しい手を思い出さないように、龍ちゃんの胸に頭をうずめた。


龍ちゃん…。


久しぶりに心が満たされた気がした。
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