依存~愛しいキミの手~
「もしかしたら、相手も同じ気持ちでいるかもしれないとは思わないの?」


「…考えたこともなかったです…」


ママはタバコに火をつけ俯く私を見つめた。


「辛いのは自分だけじゃないと、私は思うわよ。相手も好きなまま別れたんだから」


ハンカチで涙を押さえながらママに目を向ける。


優しく微笑みかけてくれた。


圭介も同じかもしれないなんて、考えたこともなかった。


自分でいっぱいいっぱいで、思い出すのが怖くて、必死に忘れようとしてた…。


「…そんなこと考えてもみませんでした…。自業自得だって後悔してばかりいて…」


「大事な時ほど、相手の気持ち考えてみないとね。あすかは、今の自分じゃ会いに行けないって言ってたよね?じゃあどんな自分なら会いに行けるの?」


ママが煙りを横に吐き出し言う。


「どんな…自分…」


そんなこと、考えたことなかった…。


「後悔してるだけじゃ、何も変わらない。先に進みたいなら、しっかり先のことを考えないと。それが反省ってことよ」


反省…?


私…別れてから反省なんかした?


あの時箱を開けたのがいけなかった、あの時ああしたから、あの時ああすればよかったって…後悔だけしかしてない…。


「会いに行ける自分になりなさい。会いに行ってダメでも、きっと前に進めるから」
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