ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~





「……アリス?」

芹霞が訊いてくる。


「うん、僕達は元老院から、篠山亜利栖という高校3年生の少女を連れてくるように言われているんだけれど、彼女は行方不明でね」


「……ああ、人の名前ね。あたしまた……いや、こっちの勘違いだから」


俺の顔を見た途端、あからさまに誤魔化した。

俺だって覚えている。

腹立たしいあのゲーム制作集団は"アリス委員会"だった。


乙女と名のつくものには、アリスがモチーフにされていることが多いから、特別驚くものでもないだろう。


「ねえ、なんでその亜利栖ちゃんを探しているの、元老院ってとこ」


「んー。元老院が管理している書物に"黒の書"というものがあるんだけれど、それが無くなってしまったんだ。その行方の鍵を握っているとされるのが、篠山亜利栖。彼女が盗んだのか、或いは今の持ち主なのかはまだ判らないけど、その黒の書っていうのは、表世界に出てはいけない代物でね」


玲の困った顔を見て、何かを感じたのだろう。

「黒の書!!!? 何その…怪しげな本!!」


芹霞の顔はやや青ざめながら、俺を見た。


「ああ、怪しげも怪しげな代物だ。

狂えるアラブ人が著したと言われる魔道書、死霊秘法(ネクロノミコン)。それを長い年月をかけ、元老院が科学的に研究した書物を黒の書……黒の断章(フラグメント)とか呼んでいる。

もしその内容が現実になれば、不死の軍団を作ることが出来るとされている」


「ふ、不死!?」


「ああ、生ける屍……

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)のような軍団だ」


「じ、じゃああれって……」


「因果関係は判らない。だが黒の書が正規の保存場所からなくなってから、実際…血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が出現している。時期的にはあっている」


「ぐ、偶然の産物でなくて!?」


「うーん、そう思いたいけどね、緋影まで出てきちゃったらね。生ける屍は、黒の書と、死に対して極端に耐久性のある肉体が必要となってくるみたいなんだ」



「緋影って、何者?」



俺が答える。


「緋影というのは、八百比丘尼(びくに)……人魚の不死伝説の起源となった一族。つまりは死に耐性を持った、"死ににくい"一族だ」



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