ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



桜ちゃんの乱入で、奴は部屋から連れ出され…暫し部屋の外で、桜ちゃんの怒鳴り声と湿ったような重い音が鳴り響いた。


「「………」」


あたしと櫂は、ただ黙って音のする方向に顔を向け…それが落ち着いた頃、櫂が笑って部屋を出た。


結局煌は、いつも以上におかしなまま…桜ちゃんに引き摺られる様にして、櫂と出かけてしまった。


おい、ハードボイルドはどうした、ワンコ。

それならチワワのようだぞ?


大丈夫かな。


あれでちゃんと櫂を守れるのかな…。

まあ…桜ちゃんがいるから大丈夫だろうけれど。


一体、どうしたというんだろう?


首を捻りながらあたしは服を着替えて顔を洗い、居間に赴いた。


居間からは、朝食のいい匂い。

玲くんがトーストとハムエッグを用意していてくれていた。


あたしが座ると同時に出て来る朝食。

暖かいホットミルクも同時に出て来る。


さすがは玲くんだ。


玲くんはあたしの向かい側の席について、あたしを見ている。


にこにこ。


朝から心がほっこりする。


「おいひ~。玲くんの作るのは何でこんなにおいひーかなあ。あたしと同じスーパーで買う材料なのに、出来上がるのが全然違うや。おいひ~おいひ~」


朝から幸せ。


ワンコのことなど綺麗さっぱり思考の彼方。


顔が自然と綻んで、悶えて…片足をダンダンと鳴らしてしまう。


下品上等。

庶民の最高の賛辞だ。


「そう? そうやって喜んでもらったら、作り甲斐があるね」


にっこり。


ああ…癒される。


「もう、玲くん大好き!!!」

「ふふふふ、僕も芹霞が大好きだよ?」


玲くんのこの綺麗な笑みにノックアウトだ。
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