ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「絶対、玲くんいいお嫁さんになるよ」


間違いない。


「料理は上手いし、綺麗好きだし、頭いいし、優しいし、気が利くし。美人さんだし。パーフェクト!!!」


「……それって、男としてはどうかな?」


玲くんは苦笑する。


"男"。


そんな言葉が返るとは思わなかったあたしは、少し吃驚してしまった。


性別を超えた処に玲くんは居るから。


だけどこんなに何でも出来る綺麗な人を、ただの男の人としておくのは勿体無い気がする。


「玲くん、神崎家は気にしないよ? お嫁に行き損なったら、ウチに来てね。行き遅れの年増のお婿さんと、若いお婿さんが歓迎するよ」


「うーん、年増は怖いし、若いのは周りが怖いし。どっち貰っても僕の命はないから、謹んで遠慮しておくよ」

「あら残念」


玲くんはくすくす笑った。


「……"男"として、まるで意識されていないっていうのも…結構辛いよな」


そんな哀しげな呟きはあまりにも小さすぎて、あたしの耳には届かなかった。


あたしの平らげた空いた皿を洗い終わった玲くんは、あたしに…昨日作っていたストロベリーシャーベットを出してくれた。


まさに至れり尽くせり、パラダイス。


「玲くんはよかったの、櫂達と一緒に行かなくて。あたしなら大丈夫だよ? ちゃんとお留守番出来るよ?」


「いや、芹霞がどうとかいうんじゃなく、僕は……影の存在だからね。櫂という太陽と一緒に、表舞台には出れないんだ」


寂しそうな鳶色の瞳。


あたしは玲くんの過去をあまり知らないが、前に桜ちゃんから、当初は玲くんが紫堂の次期当主候補であったと聞いたことがある。


櫂が変貌しなければ、玲くんの運命も変わっていただろう。


こんなに寂しそうな表情をしなくてもよかったんじゃないか。


そう思うと――

胸が締め付けられる。
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