ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の悲鳴

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――悪夢だ。



絶対今、あたしは…

最低最悪な夢の中に居る。



現実にはありえない。

ありえるはずがない。



"食"の本能に目をぎらつかせ、ありえない位置に体の一部が曲がっても、裂けた口をさらに広げて、食らいつこうとしてくるソレ。


その顔には、人間としての生気がないに関わらず、凶々しい"何か"に取り憑かれ…活き活きとした動きを見せるソレ。


玲くんに攻撃されて、見るに耐えない顔や身体になっても、生命を司る処を吹き飛ばさないと、命の終焉を迎えないソレ。


まさしくソレは――

あたしの嫌いな…ホラー&スプラッターの代表格、"ゾンビ"としかいい様がなかった。


そのゾンビが、後から後から家に入ってきて、あたし達に襲い掛かってくる。



そして更に――

共食いを始めた。



人の原型を僅かに残す得体の知れぬ存在が、その僅かな『人間』を食らい合う、真紅色の凄惨な光景。




漂う悪臭。

聞こえる咀嚼音。




ああ…地獄だ。



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