ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「何も、ない?」
頭に巡ったのは…
喜びよりも疑いだった。
「本当?」
「……ああ」
「本当に本当なの?」
「しつこい女だな」
「どうして!?」
すると男は口許を歪めて言う。
「ぐっすり眠る女に手なんか出したくねえし」
「え?」
「あんな状況でよく眠れるもんだ、芹霞ちゃんよー、ぎゃははははは」
「寝たの? あたし」
再度確認してみる。
ここはちゃんとはっきりせねば。
「それは本当にぐっすりと。もう昼だ」
…………。
確かに、あたしは眠かった。
眠いのに、掃除という体力を使った。
あたしの嫌いな"あいつら"とも対面した。
…………。
「寝た……寝たんだあたし…」
ああ。
あたしの本能が危機を救ったんだ。
あたしは、壊れそうな軋んだ音を立てるベッドに立ち上がり、両手を上に突き出して叫んだ。
「ブラボー、あたしの睡眠欲!!」
偉いぞ、睡眠!!!
さすがだ、睡眠!!!