ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「判った。約束ね、櫂」


櫂なら判るよね。

あたしとの約束。


それは違えることのない、

絶対的なものだから。



『ああ』



櫂の言葉で、約束は永遠になるの。


あたしは諦めないよ。

櫂に会いたいから。


そう改めて思っていた時。

それまで黙り込んであたし達の会話を聞いていた煌が、ふて腐れたような顔つきで、あたしをボタンから押しのけた。


「……え、なに煌……」


そしてあたしに代わり、煌がボタンに向かって話し始めた。


「あー、櫂?」


煌にとって櫂は絶対的だ。

しかも櫂が大好きっ子だ。


あたしと櫂が話していて、拗ねたのか?


――コツコツ、コツコツ。


やばい。

足音は完全にこちらに向かってきている。



「悪い、足音するからひとまず切る」



そう煌が言い放つのと同時に、部屋のドアが開いた。



「待たせたな」



そして――

今に至る。





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