ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「あ、そう。その氷皇がね、会長と……」


――コツ、コツ。


「あ、ねえ、煌。何か音聞こえて来ない?」


悠長に会話している時間はないのか。



『芹霞』



どこまでも深い、玲瓏な声。

あたし、この声は好きだ。



『必ず戻れよ


――俺の処へ』




 
櫂。

今、凄くじんときた。


あたし、思ってたよりも弱っていたのかな。

今凄く、櫂の処に行きたいよ。

だからあたしは――


「……うん」


本当はもっと言いたい言葉はあったけれど。

だけど長く話せば泣いてしまいそうな気がしたから。


『俺も呪詛を何とかしたら迎えに行く』



櫂。

離れていたのはどれくらいの時間?


なんだか――


『だから――煌と頑張れよ』


櫂に凄く会いたい。

櫂に触れたい。

もっと直接話したいよ。

< 364 / 974 >

この作品をシェア

pagetop