ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「あ、そう。その氷皇がね、会長と……」
――コツ、コツ。
「あ、ねえ、煌。何か音聞こえて来ない?」
悠長に会話している時間はないのか。
『芹霞』
どこまでも深い、玲瓏な声。
あたし、この声は好きだ。
『必ず戻れよ
――俺の処へ』
櫂。
今、凄くじんときた。
あたし、思ってたよりも弱っていたのかな。
今凄く、櫂の処に行きたいよ。
だからあたしは――
「……うん」
本当はもっと言いたい言葉はあったけれど。
だけど長く話せば泣いてしまいそうな気がしたから。
『俺も呪詛を何とかしたら迎えに行く』
櫂。
離れていたのはどれくらいの時間?
なんだか――
『だから――煌と頑張れよ』
櫂に凄く会いたい。
櫂に触れたい。
もっと直接話したいよ。