ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
中庭から再び母屋に入ると、先刻と打って変わって、内部は崩壊していた。
何でこんな状態にまでなるんだ!!?
「容赦ねえ」
苦笑した煌が突如消え、
次の瞬間…現れた黒服の男の首に腕を巻き付け、くいと捻った。
ゴキン、と音がして崩れる。
うっ……。
「殺してはないからな?」
煌だって十分容赦ないと思う。
爆発音が近くなる。
こんなにすんなりと廊下を走れるのは、おそらくはあの爆発音が敵をひきつけているからだ。
床に突き刺さる瓦礫。
崩れた屋根。
やがて廊下が切断された。
深く皹入った床……の下の地面が盛り上がり、滑り台のように斜め状に防御壁を象っていた。
凄まじい崩れ具合。
一体、どうしたらこんな風になってしまえるのか。
煌はそれにつかつかと歩みより、
「はっ!!!」
短い掛け声と共に片手を突き出した。
ずがあああん。
派手な音たててそれは粉砕される。
外気功という奴だろう。
うちのワンコも、難なくこなす。
あれだけ心と体をぶつけ合って喧嘩までして8年共に育ってきたのに、それでもあたしは煌の"表面"しか知らなかったのだと思うと、少しだけ…悔しい思いがした。
「おし、位置はバッチリ!!!」
喜ぶ煌の声。
砂埃が引いた向こう側には――
「――櫂ッッ!!!」
愛すべき我らが幼馴染みが、
敵である黒服に取り囲まれていたんだ。