ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「!!!?」


 
再度"その形"に、口をぱくぱくすると、僕の膝に頭を乗せて小さく身体を丸め…そして、


「………」


すうすうと寝息をたてて…眠ってしまったんだ。


場は…しんと静まり返っている。



「今、玲のこと――…

"おかあさん"って呼んだよな?」



煌がぼそりと呟いた。


「確かにな」


腕を組みながら、不機嫌そうに僕を見下ろす切れ長の目。


「………」


金色の瞳は、僕をじっと睨み付けていて。


桜はまだ放心状態だし。


「って、桜どうした?」


桜がこんな姿を晒すなど、普通では絶対ありえないことで。


「放っておけよ。

あいつもやられたんだ」


煌が溜息まじりに、苦々しい笑いを見せた。


「?」


「芹霞に"初ちゅう"奪われたんだ。ほっぺだけど。刺激、強すぎたみたいで。

あいつ、意外と"純粋(ピュア)"だったんだな」


それはそれは――。


「………」


僕は桜を見ながら――

笑いを堪えた。



僕の膝には…可愛い芹霞。



"お母さん"


ああ本当に…


いい加減、自覚してよね?



僕は――

男なんだよ?




< 513 / 974 >

この作品をシェア

pagetop