ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「……芹霞、櫂の言葉、理解出来たか?」


芹霞がぶんぶんと頭を横に振っている。


「だよな。だって藤姫は死んじまってるし、篠山亜利栖は元老院が探せと言ってきた女なんだぜ? 1人2役? 藤姫だと思ってた人間が実は篠山亜利栖の仮の姿だったとか!? ありえねーだろ。篠山亜利栖は緋影だし、篠山亜利栖としての女子高生ライフを満喫していたんだから。桜が調べていたじゃねーかよ」


「……藤姫は生きていた。ただし五体満足ではない。元老院は藤姫を生かしたい……その前提で考えてみなさいな、馬鹿蜜柑」


桜が冷たく言い放った。


「あ?」


「だから先に、櫂様が訊いていたでしょう。緋影の純血は、"姉弟"だけなのかと」



芹霞が携帯画面を見せた。


"緋影の身体が特殊だから探していたの?

新たな藤姫の身体として"


「そうですわ、さすがは芹霞さん。それに比べてこの呆けた馬鹿蜜柑は……馬鹿面に一層磨きがかかってますわ。

恥ずかしくなりますわね」


わざとらしいくらいの大きな溜息が響いた。


「新たな藤姫って…何でそれで納得出来るよ!!? 

大体俺が知る藤姫ってのは、いつも控え目に微笑んでいる純和風の……」


"あたしがみた子、藤色の着物着ていたよ"


「うわ、それモロ"藤姫"の恰好じゃねえかよ!!!」


「だとすれば、御階堂が藤姫の代わりに元老院職にいる意味は?」


玲が陽斗に訊いた。


「あいつは……利用されているだけだ。あの女に」


「それでも君は、彼と行動を共にしていたね。何故? 紫堂に対する憎悪なら、別に単独で行動してもよかったはずだ。

御階堂に力があるとすれば、権力。

そんなのには拘ってはいないだろう?」


陽斗は答えない。


「篠山亜利栖と共にいるならまだ判る。同じ緋影だ。だけど小賢しいだけの御階堂に手を貸していたのは何故だ?」


「だから、さ。玲」


俺は斜めに玲を射貫いた。


「陽斗は"利用される"だけの純血を放ってはおけなかった。

だから…御階堂を見捨てられなかったんだ」


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