ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
臓器移植みたいなものなのか?
生者の臓器は、死者の肉体に有効なのか?
そこまで陽斗の…緋影サンというのは凄いのか?
理解し難い現実的な理屈はさておき、死んだ藤姫の体に亜利栖の体がせっせと運び込まれて、リニューアルは成功したと仮定しても。
あたしが見た少女の姿は…桜ちゃんの持つ、篠山亜利栖の写真そのものの顔。
だとしたら――
顔を挿げ替えることも必要だったのか?
藤姫は、顔を怪我でもしていたのか?
仮に整形手術の可能性があったとしても、どうして篠山亜利栖そっくりにする必要があったのか。
ホクロまで同じなんて、意図的としか思えない。
実は、藤姫のフリした亜利栖だったとか?
――ごきげんよう。
亜利栖チャン、あたしに何の用なんだい?
年上だから、亜利栖サンか…?
だけどあたしの頭に直接話しかけてきて、それだけで玲くんの守備範囲を凌ぐ"瘴気"とやらを堂々と放って、簡単にあたしの声帯奪えるような…そんな力があるのだろうか。
やはりあの特異な雰囲気は、少し前まで同じ女子高生していた人が持つモノではないと思うんだ。
何処までが亜利栖で、何処までが藤姫か。
あの少女が、亜利栖にしても、藤姫にしても…平々凡々庶民女たるあたしに、此処まで親密に挨拶される覚えはないんだけれど。