ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



そして…思考は堂々巡り。

ぷすぷすと音をたてる頭の中。


これなら…お花畑にいるワンコと同じになるのは時間の問題だ。


そんなことを思っていたら。


「では…話し合いは一旦休止して、本家に行くか」


櫂の号令で、煌と玲くんと桜ちゃんは立上がった。


1人あれこれ考えていたあたしは、話し合いが行われていたことすら気づかなかった。


無論、聞かせる気もないような…難しい話がなされていたのだろう。



櫂が行こうとするから。


あたしはその服の裾を掴んで引き留めた。


「何だ?」


行かないでと首を横に振り続ける。


危ないんでしょう?

罠があるんでしょう?


そんな処に行かせたくない。


言葉無くとも、櫂はあたしの心情を察したようで、少し身を屈めて視線をあたしに合わせると、幽かに微笑み…あたしの頬を手で触った。


「大丈夫、俺を信じろ」


その顔は、あたしの幼馴染ではなく、紫堂の御曹司のもので。

一番、あたしが苦手としている顔で。


そう――


紫堂としての櫂は、あたしを必要としていないから。

あたしを撥ね付ける、別次元の存在だから。


"信じろ"


完璧主義のその言葉を信じるしかない。





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