ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
本当に――
芹霞さんという女性の存在は凄いと思う。
完璧主義を遂行出来る櫂様にとって、唯一の弱点。
櫂様だけではない。
櫂様の右腕たる玲様と、
櫂様の身辺を守る馬鹿蜜柑も然り。
彼らの連携は芹霞さんによって瓦解する恐れがある。
それはつまり…紫堂の弱点。
そして脅威。
だからこそ、私が――
しっかりしなくては。
そう…テディベアを抱きしめた。
ただ――
溜息混じりに雑念を振り払い、何でもないというような顔を私に見せて微笑む玲様はやはり出来た人で、
明らかに嫉妬の邪念に捕らわれたまま、ずんと落ち込んでいく橙色は、やはりただの馬鹿蜜柑で。
祭場の中心代々木に近づくにつれ、怒りが混ざったような溜息と共に、放出する…絶対零度の凍気を、意志の力で収めて心身の調整を図る櫂様は、やはり紫堂の次期当主で。
そんな面々を眺めていられる私の立場は、密かに楽しかったりする。