ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
その顔は警戒に満ちていて。
"考えすぎだよ。先輩の顔つき、前と違うじゃない"
「だから気になる」
眉間にはくっきりと縦皺。
"考えすぎだって"
陽斗は答えなかった。
「翡翠の間だ。行こう」
先輩があたしの腰に手を回し、気障っぽくエスコートしようとしたが、陽斗がやはりその手を払った。
「こいつに触るんじゃねえ」
「……神崎の番犬になったか、道化師」
先輩の笑いは陽斗を煽るばかりのようで。
「そんなに心配ならついてくるといい」
――何の役にも立たんがな。
そんな呟きは誰にも聞こえるはずがなく。