ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




――紫堂に呪いあれ。


――紫堂に、災いを!!!



床に伏せっていた母が、表舞台に堂々と現われたのは、櫂のお披露目式だった。


僕は、狂気に満ちた…あのぎらついた目を忘れることはないだろう。


"紫堂"に取り憑かれた母。



僕は――


――あはははははは。


狂乱した母の末期に、僕の姿を見た。


母の体から噴き出る真紅は、僕を縛った。


かけられていた呪いは、また新たな呪いを生み…更なる強固ないばらとなって、棘ある触手のように…僕に巻き付いたように思えた。


呪いをかけられたのは――


母を失望させた僕。

母にとって存在価値のなくなった僕。



母の呪いによって、

僕もあんな風に狂ってしまうのか。



あんなに惨めで、

あんなに穢らわしく。


僕に流れる、色濃い気狂いの血が騒ぎ出す。



騒然とする中、僕に冷たく当たるようになっていた当主が、僕に責任を求めた。


僕だけではない。

酒と女に溺れる父にも。


その余波は、遠戚まで及ぼうとしていた。


事実上――

母に連なる者の根絶やしだった。


次期当主に手を上げたのは、僕の実の母。

誉れある場を血に染めたのも同じく。


親の責任は家族が取る。

それは正当な責任の取り方かもしれない。



僕はこの時点で、

紫堂に仇なす不安愁訴になったのだから。



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