ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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「約束の…15分、経ったね」


玲くんの呟きと共に、

後方のドアが開け放たれた。



もっと長く感じていたけれど、実際の時の流れはもっと緩やかだったらしい。


そこであたしはようやく、

置かれた現実に引き戻される。


「随分と、イヤらしい声が聞こえたけれど? まさかこんな処で盛ってないよね、芹霞チャン?」


「な、何であたしがッ!!!」


「そっか。盛ったのはレイクンの方か。あんな声が漏れた後、太股から血を流してるのを見てると、えらく扇情的な気分になるね。最後までヤッちゃった?」


「な、なななな!!」


愉快そうに笑う蒼生に、

動揺を通り越して憤慨したあたし。


しかし玲くんは、さっきまでの激情が信じられないくらい落ち着いた顔つきで、平然と藍色の瞳を見据えていた。


「……へえ? この15分で、腹くくっちゃったんだ?」


真意はあたしには判らないけれど、蒼生は玲くんの態度から何かを悟ったらしく、彼としては珍しいくらい少し吃驚した顔つきをしていた。


確かに、何も動じない玲くんは頼もしい限りだけれど。


氷皇は違う何かを予想していたらしい。


「人の情を道具にとしか扱えない…お前や藤姫に、僕の心など理解することは出来ないだろうね。散々人を惑わせて、狂わせて、挙句には同士討ちをさせようなんて、人を馬鹿にするのもいい加減にしろよ」


鳶色の瞳に浮かぶのは、静かな怒りだ。


"お前"

そう…挑発的に、玲くんは言った。

 
「随分と噛み付くねえ、白き稲妻は。本当に腹くくったんだね、あはははは」


蒼生は愉快そうに笑いながら、腕を組んで言った。


「無駄話はここまででいいね? じゃあ早速本来のプログラム再起動してよ。解除、できたんでしょ?」


威圧的な声だった。


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