ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――永遠なんて…俺を殺す気かよ。
櫂は…
あたしを忌んでいるのではないだろうか。
そう思う程、涙は止まらない。
――芹霞ちゃあああん!!!
護っていたはずの櫂に護られて。
烏滸(おこ)がましくも、その櫂に自分勝手な情をぶつけて。
櫂はどう思っていただろう。
――屍なのに。
「……か?」
8年もの屍のくせに…
生きてる櫂に永遠を望むなんて、愚かすぎるよ。
「……芹霞」
こんな思いを味わうのなら…
いっそ8年前にそのまま放っておいてくれた方がよかった。
知らずに…逝った方がよかった…。
「芹霞、僕の顔を見て……?」
視界一杯に端麗な顔が拡がった。
悲哀に満ちた褐色の瞳。
悲壮の翳りは、見ているだけでも痛々しく。
玲くんの声は泣いているかのように、掠れきっていて。
だけど、あたしの両頬に添えられた手は、あまりに優しいものだったから。
「芹霞…押さえ込まないで、
僕に言ってご覧?」
まるで…生きているように、優しく見つめてくれたから。
――どうしたの、芹霞?
いつものように、訊いてくれたから。
「玲くん……あたし……」
あたしは…玲くんに言ったんだ。
「生きていると…思っていたの」
ほろりと…涙が零れ落ちた。