ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


嫌だ。

絶対嫌だ。


会いたい。


今すぐ櫂に会いたい。


それがあたしの我儘だとしても。


櫂を血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)などに渡したくない。



櫂はあたしだけの櫂だ。


胸が切なさに悲鳴を上げる。


拒まれても何をしても、櫂に会いたい。



「……?」


画面が突然赤い光に覆われた。


そして櫂と煌が走り出し――

映像は消えたんだ。


カメラは…故障したみたいだ。


「大丈夫だよね、玲く……」


玲くんの意見を聞こうと玲くんを見た時、あたしは思わず声を上げた。



「玲くんッッ!!??」



玲くんは、床に片膝をついて、苦しそうに蹲(うずくま)っていたんだ。


元より白いその顔は、更に色味を喪失して変な汗をかいている。


一目でわかるその様は、完全に異常事態を示していた。


心臓の位置に、掻き毟る様な形でおかれた玲くんの手。


発作!!?

発作がおきちゃったの!!?


「……ちッ!!」


本当に吐き捨てるような舌打ちが聞こえた。


蒼生だ。


「呪詛を増長させる日蝕が起こったというのに、気高き獅子が倒れないのは変だと思ったら、そういうことか。


白き稲妻――

お前、プログラムに何を細工した!!?」



蒼生の荒げた声。



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