ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「陽斗……」


「何とかなるだろ。紅皇も来ていることだし」


「え!? 噂の紅皇サンはどちらに!?」


「時期がくれば姿を現すだろ。でも居るぞ、この空……東京全体に結界を張って呪詛の進行を止めるなんて、紅皇しかできねえ」


どんだけ凄いんだ、紅皇サンは。


「で、どうよ、芹霞ちゃん。

俺は行くのか行かないのか」


あたしは言葉に詰まる。


「ほらほら。ちっとだけでも本音言ってみ? 俺だからいいだろ?」


意地悪く陽斗は笑い、耳に手をあててあたしの口元に近づいた。


――うう。



「……て?」


うううう。


「聞こえねえ」


口が――動いてしまう。



「陽斗が死なない程度に……櫂を護って?」



にやり。


陽斗は笑った。



ああ、あたしはなんて性悪なんだろう。


陽斗を戦地に赴かせてしまうなんて。


だけどやっぱりあたしにとって櫂は全てで。

どんなことをしても櫂を助けたくて。


「は~い、よく出来ました。


ぎゃははははは」


陽斗は嬉しそうに笑ってくれるけど、心は酷く複雑で。


言った傍から、言ったことに対して悔いが沸き起こって。




その時だ。



――ちゅ。


熱い何かが頬に触れ、

更にぺろりと舐められたのは。


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