ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├王子様の絶叫

 櫂Side
*************************



芹霞に――

どう接して良いのか判らなかったんだ。


いつも通りに振る舞って良いのか。

それとも今は、控えた方が良いのか。


あんなに…泣かせてしまった俺だから。


だから、芹霞の反応を窺った。


目が合った芹霞は――

身体を強張らせた。


煌には…あんなほっとした顔を見せていたのに、俺には…極度の緊張を見せた。



他人より…開いた距離。

幼馴染以下の…距離。



視線を搦めて尚も…

その距離は埋まらない。


芹霞の…心が遠かった。



それがどんなに心を抉られたか、

芹霞…お前はきっと判るまい。


だから――

建物が崩れた時。


咄嗟の反応が遅れてしまったんだ。


芹霞を抱いて護ろうと、伸した手を掠めるように…

目の前で…金色に奪われた。


芹霞を。



俺はただ――


堕ちて行くのみ…。




< 914 / 974 >

この作品をシェア

pagetop