ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



――俺、芹霞とキスした。



馬鹿正直な煌。


まさか大声で、しかも…あんなに顔を真っ赤にして、俺に告白してくるとは思ってもなかったけれど。


煌は考えすぎると、突飛な行動に出ることがある。

桜曰く…ショートしてしまうらしい。


考えすぎる程考え…悩んだのか。

そんな煌を…俺は嫌えるはずはない。



――俺、芹霞とキスした。


対等を主張した俺だから、フェアでありたいと…尚更強く思ったのだろう。


合意ではないと…

一方的なものだと、煌は言うけれど。


だから口にしたのもあったのだろうけれど。


あの時俺は…嫉妬に襲われていたんだ。


赤坂駅にて、煌の"男"に揺れた芹霞を見ている俺は、一方的なものだとは思えなかったんだ。


煌は…気づいていないだけ。

芹霞を…自分の"男"で惑わせるだけの魅力があることを。


そんな自覚ないまま…

8年前の事実を知っても尚、想い続ける煌。


煌が引いてくれれば…との淡い期待は砕かれて。


俺はそれ以上の…煌との会話が出来なかった。



……俺はどうだ?


12年経っても幼馴染以上にはなれず、"特別な男"として見ても貰えず。


あれだけ泣かせて、あれだけ拒まれた俺は。


俺の…"男"は、受入れられないのか?


変化が…欲しかっただけなんだ。


俺が安心出来るような…変化を。

俺だけの優位性を…確認したかった。



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