− 夏色模様 −




「ここ数ヶ月。 まお、俺ん家に何回来た?」


「……」


ここ数ヶ月……。 正直、いっくんの家には一度も行っていなかった。


いっくんは冬の“センター試験”と“一般入試”の為にずっと勉強していることは知っている。

バイトも、受験だからって夏休み前で辞めた。


いっくんがどれだけ受験に取り組んでいるか、一番近くで見ていたから、いっくんの邪魔をしないようにしていた。


あたしがいっくんの家に行くと、いっくんは“あたしを優先する―――”

それが分かっていたから、なおさら行かなかった。



「そんな理由だと思ったし」


当たり前。 いっくんの未来をあたしのせいで、潰して欲しくない。

いっくんには、いっくんの未来がある。


今は、あたしと過ごすことより“受験”のことを考えて欲しい。

そうやって思うことは、イケないこと?




< 174 / 300 >

この作品をシェア

pagetop